2025.03.12

テレワークを活用した仕事と介護の両立

2025.03.12

テレワークを活用した仕事と介護の両立

 以前、「絶対にやってはいけない介護【前編】」で、
・その1:見守り・介護をきっかけとした同居
・その2:日常的に家族が直接介護に関わる
・その3;テレワークを活用した仕事と介護の両立

絶対にやってはいけない介護【後編】」で、
・その4:育児同様に介護休暇・休業を利用して介護する
・その5:きょうだいで分担して介護費用負担
というコラムをお届けしました。
今回はその中でも、2025年4月の「育児・介護休業法」の改定を機に、「テレワークを活用した仕事と介護の両立」
の内容をさらに掘り下げてお伝えします。

●急激に高まる「テレワーク実施率」
 2019年12月までは10.3%だったテレワーク実施率が、コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、2021年には32.2%と急激に高まりました。今やテレワークは新しい働き方のひとつとして周知されています。それに伴い、テレワークなら家族の介護との両立も可能ではないかと考える方も増えてきました。ただ実際に介護とテレワークは、必ずしも相性がいいとは言えません。

●直接の介護をしながらのテレワークは難しい
 今の時代は、家から外に出なくても日々の買い物や食事など、ネット注文でなんとかなってしまいます。逆にそれが、家族で介護を抱え込む要因になります。テレワークで常に親の近くにいることで、仕事中でも話しかけられたり、親にお願いされたことに手を貸すことも増えてきます。親と同じ生活習慣にいては、仕事モードに切り替えられないため、労働生産性の上がらない働き方となってしまうのです。いつまで続くか分からない日常的な介護に、常態的にテレワークを活用すると、お互いのストレスとなってしまうでしょう。そのため、直接の介護にテレワークは有効ではないと考える必要があります。下記の記事では、さらに詳細をお話しさせていただきました。。
※参考記事:「介護はテレワークで」の幻想。親孝行の呪いを解く、本当の「親との向き合い方」(サイボウズ式)

●テレワークをしながら介護するときの心得
 介護というものは、状況が改善していくことはなく、出来ないことが増えていく親を目の当たりにしなければなりません。近くで見守って安心しようとしても、老いていく姿を直視すれば、さらに不安になるのは当然です。関われば関わるほど、肉体的にも精神的にも負担が過度になるのです。家族だからこそ、「これは本当に親のためになっているのか?」「自分の不安を解消したいだけなのか?」と考えられる心の余裕を持つことが大切です。
ずっと近くにいると支える側に余裕がなくなっていくものです。介護が始まった当初から近くで見守るためにテレワークを選択してしまうと、そこから抜け出すことはとても困難です。適度な距離感を維持して仕事を続けられる環境を持つことが、無理なく続けられて親の長生きが喜べる介護につながります。

●「テレワーク」や「育児・介護休業法」を上手に活用する方法もわかる新刊
 2025年3月に編集の山中浩之さんと共著で『上司に「介護始めます」と言えますか? 信じて働ける会社がわかる』(日経BP)が発売されます。
同著では、「育児・介護休業法」の4月に改正の機に、会社の覚悟とホンネは介護支援から見えてくるとして、日立製作所など先進企業の事例から社員ロイヤリティを上げる支援制度の作り方を紹介しています。さらに、テレワークや「育児・介護休業法」を上手に活用して、仕事と介護を両立するためのコツや事例にも触れています。