2025.02.05
家族介護にテレワークを活用する際の注意点
2025.02.05
2025年4月の「育児・介護休業法」の改定にともない「介護にテレワークを利用する際の注意点」について、どんな場合は有効なのか、また必要なタイミングなどを、今回のコラムで改めて確認していただければと思います。
●テレワークと介護
2025年4月から「育児・介護休業法の改定」や「介護離職による深刻な経済損失対策」として、国もテレワークによる仕事と介護の両立を推進しています。仕事と介護の両立支援制度の強化として、介護離職防止のための個別の周知・意向確認・雇用環境整備等の処置が事業者の義務となる中で、上司からテレワークを勧められることがあるかもしれません。
いつでも親を側で見守れる環境の中で、仕事ができると容易に考えてしまいそうですが、使い方によっては介護離職のリスクを高めたり、親をさらに弱らせてしまう原因になることがあります。
介護は、仕事のように計画通りに進むことはなく、先の目処を立てることも出来ません。“テレワークなら両立が出来るはず!”と決めつけるのではなく、仕事と介護を両立させるための一つの手段として、上手に利用することが大切です。
●期間の目処がない直接の介護にテレワークは向かない
テレワークの場合、四六時中親の様子を見ることが出来てしまいます。いつまでも続くか分からない介護にテレワークを活用すると、お互いのストレスとなってしまうケースがとても多いのです。
親の出来ないことが目について、つまずいて転ばないように、安全のため先回りをしてなんでもやってしまいます。1人の時はゆっくりなら出来ていたこともやらなくなったり、やってもらうことが当たり前になると、筋力や判断力の低下に繋がり介護状態を促進させてしまうことになります。また、子どもが何でもやってくれるからと、ホームヘルパーやデイサービスなどの外部のサービスを拒否する原因にもなります。
介護は状況が改善していくことはなく、出来ないことが増えていく親を目の当たりにしなければなりません。家族が関わるからこそ、肉体的にも精神的にも負担が過度になるのです。そのため、日常的な世話に加えて、ひとり歩きの見守りや、デイサービスの送迎の立会いなども含めた、「期間の目処がない直接の介護」のためにテレワークを利用することはお勧めできません。
●テレワークを有効に利用する方法とは
介護にテレワークを有効利用できるタイミングは沢山あります。病院の診察の付き添い(頻度が多い場合は訪問診療を検討)・入院時のお見舞い・ケアカンファレンス(サービス担当者会議)の出席・実家の介護リフォーム工事の立会い・介護申請や訪問調査の立ち合い・ケアマネジャー選びなど、ピンポイントの活用がお勧めです。
看取りのタイミングにも、テレワークを活用することをお勧めしています。テレワークをすることで、仕事をしっかり休んで付き添うより、最後の時間を一緒に居すぎてしまうことを防ぎ、わずかでも仕事をしておくことで看取り後に仕事に戻りやすくなります。看取り後の気持ちのケアには、仕事に集中してご逝去した家族のことを考えない時間を持ち、“時薬”の効果を待つことが大切です。
●大切なのは心に余裕を保つ距離感
テレワークの利点を活かすためには、時間が限定的なピンポイントな活用であることが重要です。家族だからこそ、ずっと側にいると支える側に余裕がなくなっていくのです。初めから側で見守るためにテレワークを選択してしまうと、そこから抜け出すことはとても困難です。適度な距離感を維持して仕事を続けられる環境を持つことが、無理なく続けられて親の長生きが喜べる介護につながります。