2024.11.20
高齢者の生活と食事の大切な関係
2024.11.20
多くの方にとって「食べること」は生活の楽しみのひとつではないでしょうか。施設に入居されている要介護高齢者の楽しみが「三度の食事」の方も少なくありません。高齢者にとっての食事とは、健康維持の栄養補給としての側面もありますが、社会と関わるためにも必要不可欠なものでもあります。今回は「高齢者と食事」について、食事の在り方や家族の関わり方をお伝えします。
●食べる以外の目的
日本は気候や風土の違いで、地域により食文化が大きく異なります。西東で醤油や出汁の味が違うように、各家庭ならではの食事風景があります。また人間の五感の中でも香りを感じる嗅覚は、記憶をつかさどる海馬とダイレクトに結びついているため「美味しい記憶」として残る思い出の食事があったりします。
また毎日の食事には、買い物や食事作りが欠かせません。買い物は、献立を考え、身仕度を整え外出し、お店に足を運び、時にはお店の人とコミュニケーションを取るといったことが含まれます。それらは高齢者にとって、適度な運動や介護予防にも繋がり、自立した社会活動を継続させる重要な役割にもなっています。
●家族の関わり方
ひと昔前までは、日本では家庭料理は女性が担うものとした価値観が根強く、母親が台所を任されていたと思います。そういった背景から、長い間家族の食事を作ってきた母親が、1人暮らしになり作る気力を無くしたり、三食を取らなくなることがあります。それまで料理を作ったことがない父親が1人暮らしになった場合は、毎日の食事作りが困難になることも多いです。
高齢になり食事や生活バランスが崩れるなど、両親の行動に変化が見えると家族としてはとても心配になります。持病など抱えている場合は、ちゃんと食事制限をしているのか、栄養のあるものを口にしているのかも気になると思います。つい口や手を出してしまいがちですが、過度に関わりすぎないことをお勧めします。どんなに心配だとしても、1日3食をサポートし続けることはとても大変です。
親の変化を近くで見れば見るほど、心配は大きくなっていきます。「健康のために」という想いが強くなりすぎて、親の食事を監視・管理してしまうことを避けるためにも適切な距離感はとても大切です。
●食べることの楽しみを継続させる
高齢の親が1人暮らしなり、冷蔵庫の管理ができなくなり食材を買いすぎて腐らせたり、賞味期限切れのものを食べて食中毒を起こすこともあるかもしれません。老化により判断力が鈍くなったり、物忘れが増えるとこのようなリスクも自ずと増えていきます。親の老いていく姿を目の当たりにすることは、辛いことでもありますが受け入れなければならないものでもあります。
近年、福祉、医療、看護の現場でも注目されている、QOL(Quality of life)という言葉があります。「人生の質」「生活の質」と訳され、私たちが生きる上での満足度を表す指標のひとつとなっています。「その人が自分らしく納得のいく生活を送ること」が、充実感や幸福感に繋がっていくと考えられています。
高齢者が最後まで自分の口で食べるという行為は、QOLの向上にとって必要不可欠です。食事というものは、自分の嗜好にあったものを食べた時に幸福を感じます。栄養面だけに囚われず本人にとって「食べることの楽しみ」が継続できるような食事環境をサポートすることが、家族の適切な関わり方なのではないでしょうか。