2024.10.30
家族介護を前向きに捉える考え方とは
2024.10.30
家族に介護が必要になると想像したり、介護に直面した時、最初に湧き上がる感情は「不安」や「心配」なのかもしれません。メディアなどから入ってくる介護関連のニュースには耳を塞ぎたくなるような出来事もあります。それでも、介護に関わることを悲観的に考えすぎないでいただきたいと思います。今回は「家族介護を前向きに捉える考え方」についてお伝えします。
●だれもが介護に直面せざるを得ない現状
「人生100年時代」と言われるように、2067年には100歳以上の高齢者が50万人に達すると、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」で推計されています。
医療レベルの高さと社会保険制度、独自の食文化などから、日本は世界一の長寿国となっています。どんな人でも「介護に依存しない、自立した生活を送る期間を長く保つ」という意味の「健康長寿」を目指したくても、長生きをするほど体の不具合は出てきます。たとえ気持ちを若々しく保っても、肉体の老いに逆らうことは出来ません。親、きょうだい、親戚と身近な人の介護に直面することは、もはや当たり前の時代となりました。
●家族をどう支えるのか
元気だった両親が老いていく姿を見るのは、とても辛いことです。元に戻って欲しい、長生きして欲しいという思いが強いほど、その変化に不安や恐怖心が強くなってしまいます。そうなると、親に過干渉になってしまい良好な親子関係を築けなくなる可能性があります。不安や心配が強いほど、親とは適切な距離をとって、直接的に支えるのではなく、見守るというスタンスで接していくことをお勧めします。
人間はもともと変化に弱いものです。老いという自分で変化をコントロールできないことなら、尚更受け入れるまでに時間がかかります。ただ、親を変える事はできなくても、自分の気持ちや行動を変える事はできます。「自分自身と向き合う」ことは、社会生活の中では与えられることのない必要な時間ではないかと考えています。
親が元気なうちに、老後のことをどう考えて今を過ごしているのか、自分の10年後の参考にしたいと相談してみることも両者にとって良いきっかけになります。初めは、ちゃんとした答えが返ってこなくても、そんな問いかけから親自身が自分のことを見つめ直す機会を与えることも出来ます。
忙しい毎日を過ごしていると、「自分にとって何が大切なのか」「どんな時間が心穏やかでいられるのか」など、当たり前のことを考える時間がありません。それでも、人それぞれ幸せの形は違います。それは自分自身でしか答えを出せないことなのです。
●プラスの側面に目を向ける
家族に介護が必要となった時に、マイナス面ばかりに目がいってしまいがちですが、それではとても辛くなってしまいます。介護は「死に向かうプロセス」のひとつですが、「今を生きることにコミットできる」とも言い換えられるのではないでしょうか。
今までと同じような生活が出来なくなったからこそ、本当の意味でどんな状態が幸せと言えるのか。自分らしく生きていくことについて、介護をきっかけに向き合うことになるのかもしれません。不安との共存や、制約のある中で今やりたいことや楽しみを見つける機会と捉えることもできます。長い人生で、誰もがいつか向き合わなければならない問いであり、とてもかけがえのない時間になると考えています。