2024.10.16
障がいをもつお子さんがいる方が孤立しないために
2024.10.16
「障がいのある子の療育に、親として何ができるのか?」と悩みを持ちながらも、誰にも相談できずに孤立してしまいがちです。また、障がいと言っても、発達は様々でひとりひとりに必要な療育があります。自分は該当しないと考える方も、このような悩みを抱える人がいるということを知っておいていただけたらと思います。
●共働きで障がいのある子を育てる
共働きのAさんは、2人の子どもを育てる母親です。長男が5歳のときに、長女が産まれました。夫は出張が多い仕事ですが、産休や育休を活用して子育てをしてきました。
長女の3ヵ月検診で「発達の遅れ」を指摘され、いつまでも言葉が出てこないことが心配になり療育センターを受診すると、医師から「明確に発達の遅れがある」と診断されました。職場復帰のためにも、様々な支援を受けられる障がい者手帳の申請を薦められましす。児童相談所での診断結果は、重度障がいである1Bでした。その結果を受けて、夫婦で社会的なサポートを活用居ながら、仕事と両立して行こうと決めました。
Aさんは、平日は地域の発達支援サービス、土日も民間の療育センターへ通い、セミナーや関連書籍から情報収集に励みました。ただ、多くの情報を収集するほど、アドバイスに違いがあり、何が正しいのか分からなくなってしまいました。出張の多い夫に相談する時間も取れず、Aさんは悩みを解消できずにいました。
「周りに同じような悩みを抱える人もいるかもしれない」と考えても、どこにいて、誰に相談していいのかも分かりません。イライラすることが増えて、子ども達に当たるようになってしまいました。長女ばかりを気にかけていることに、長男が不満を訴えるようになり反抗的な態度をとります。Aさんは子ども達に優しく接することができず自己嫌悪に襲われて、自分を責めました。それでも、やるべきことは山のようにあり、夫にも当たることが増えていきました。この悪循環の中苦しむAさんは次第に孤立を深めていきました。
●まず、自分のキャリアを大切にする
親といえども、療育の専門家ではありません。自分の子どもが、誰かのサポートなしで生きていくことが難しいと受け入れて、障がいのある子どもを育てていくことも相当な負担だと思います。愛するわが子を思ったら、「子どものためにできる限りのことをしなければ」と考えるのは当然です。働く世代の親御さんへお伝えしたいのは、「まずは自分のキャリアを大切にする」こと、「自身にとってなにが幸せなことなのか」を改めて考えていただくことです。
子育ての目標の一つは「子どもを自立させること」です。障がいのある子は、自立までのプロセスを親がかなり積極的に作らなければなりません。そのために必要な心構えは「子どもの療育にやりがいを持ちすぎないこと」です。子どもの自立を妨げるだけでなく、子どものお世話を手放せなくなってしまいます。結果「8050問題」のような厳しい状況に陥ってしまうのです。
※「8050問題」とは:「80」代の親が「50」代の子どもの生活を支えるという問題
●長期戦だからこそ考えること
母親のAさんが心身ともに元気でいることが何よりも大切です。もしAさんが倒れてしまったら、子育ても仕事も破綻してしまいます。Aさんが倒れたら、長男にその負担がかかることが想像でき、社会問題にもなっている「ヤングケアラー」になってしまいます。いつかAさんたち親がいなくなったときに、長男へ全てを背負わせてしまうことは避けるべきです。
長期戦だからこそ、サポートする家族の健康と心の余裕が必要不可欠です。誰かに悩みや不安を話すだけでも、考えが整理されたり、気持ちが落ち着くこともあります。その子にとって大切なことや療育との向き合い方、キャリアと子育ての両立、将来の不安、入居施設選びなど、一人で抱え込まず発達支援センターや相談支援員など療育の専門家に相談することをおすすめします。