2024.09.18

夫婦で同じ老人ホームへ入居する際の注意点

2024.09.18

夫婦で同じ老人ホームへ入居する際の注意点

 夫婦で同じ老人ホームへ入居を検討される方は少なくありません。夫婦共に介護が必要になった場合に、長年連れ添ってきたのだから最後まで一緒にと考えるのは自然なことですが、同じ施設へ入居することが、必ずしも良いことになるとは限りません。今回は「夫婦で同じ老人ホームへ入居すること」について事例をもとに、注意点をお伝えします。

●夫婦で同じ老人ホームに入居を検討する事例
【ケース1】
Aさんの両親は2人暮らしで、父親の介護を長い間母親が担ってきました。肉体的にも精神的にも限界を感じ始め、自宅で介護することに不安を持つようになった母親から、「お父さんと一緒に老人ホームへ入りたい」と相談を受けました。母親は、父親を1人で老人ホームへ入居させるのはかわいそうと感じているようで、父親も「お母さんと離れて暮らすより、最後まで一緒にいたい」と言います。家族としても、本人達の希望を叶える方向でと夫婦一緒に入居できる老人ホームを探すことにしました。
【ケース2】
 Bさんの父親は、脳梗塞の後遺症から右半身に麻痺が残り、要介護状態になりました。母親が自宅で介護をしていましたが、最近、母親に認知症の症状が見られるようになりました。Bさんは遠方で暮らし、母親が父親の介護を続けることは難しいと考え、両親を一緒に介護をしてくれる施設を探すことに決めました。
 
●夫婦が一緒に入居することの注意点
 AさんやBさんのように、両親の希望や必要に迫られて夫婦一緒に入居することを決断する方も多いです。最後まで一緒にいたい、いさせてあげたいと思える夫婦関係は素晴らしいものですが、施設での同居生活には注意しなければならない点があります。
Aさんの両親のようなパターンだと、「夫婦部屋」へ入居しても、母親は自宅と同じように父親の面倒を見てしまうことがあります。父親もナースコールを押さずに、母親を頼ってしまいスタッフがケアに入れないケースもあります。次第に母親は疲れてきて、結果、夫婦の距離を取らざるを得ないことも少なくありません。
Bさんの場合は、母親はまだ1人で生活できる機会を失うことにもなります。施設では、食事の用意や洗濯・掃除などの生活全般を担ってくれるため、Bさんの母親にとっては過剰なサービスとなり、認知症の症状を悪化させる可能性もあります。

●選択肢が狭まるリスク
 夫婦が同じ居室へ入居できる施設は公的施設にはないため、民間の施設の中から探すことが前提となります。民間の施設にも「夫婦部屋」はもともと数が少ないため、すぐに入居するということも難しい場合があります。民間の施設は、公的施設に比べて高額になるので、両親に金銭的余裕がなければ「夫婦部屋」に固執せず施設を探しましょう。
また、Bさんのように、夫婦どちらにも介護が必要な場合は、1つの施設で全く異なるサポートを受ける必要があります。それぞれに適切なケアが受けられるのかという点も確認する必要があります。

●適切な距離感が良好な夫婦関係を維持する
必ずしも夫婦が一緒にいることが最善ではないということもあります。適切な距離があるからこそ良好な関係を維持することもできます。残念ながら、誰しも必ず1人になる日は来るのです。一緒にいることを優先しすぎると、1人になった時の喪失感はとても大きくなってしまいます。同じ施設でも、別々のフロアで生活するという選択もできます。どんな形が良いのかは、介護状態だけでなく、人それぞれ何を大切にするのかで、最適な選択肢が変わってきます。本人達の言葉に振り回された結果、本当の要望を叶えられないこともあります。