2024.08.28
親の終活をスムーズに進める方法はあるのか?
2024.08.28
「終活」とは人生の終わりについて考え、備えていく活動のことですが、介護が必要になったときの備えとして親に終活を進めておいて欲しい、と考える方も少なくないでしょう。今回は親の終活をスムーズに進める方法があるのか、考えてみたいと思います。
●義父母の逝去から親の終活を進めたAさん
Aさんは、義父母が二人ともガンであっという間に逝去し、相続の問題で苦労していた妻を目の当たりにしていました。そして、離れて暮らす両親が75歳の後期高齢者となったのをきっかけに、親の終活を進めていこうと考えました。
ある程度の情報収集をした上で、帰省した際に有名人の訃報を話題に出しながら「父さんもそろそろ終活を始めてみてはどうか」と声をかけてみました。すると「ちゃんと考えているから心配するな」と返答され、それ以上の話はありませんでした。
次の帰省時に「エンディングノートとかがあるのなら、保管場所だけでも教えてもらえないかな?」と聞くと、父は「今はその話はしたくない」と、不機嫌な表情になってしまい終活の話を上手く進めることができませんでした。
●Aさんが親に終活を上手く進められなかった理由
Aさんとしては、何かあったときに両親の想いを尊重できるよう、しっかり事前準備をした上で、前向きな気持ちで終活を提案したつもりでした。しかし、全く話がかみ合わず、エンディングノートのありかさえ教えてもらえませんでした。
老後や人生の終わりを考えた時、95.1%の方が「子供に迷惑をかけたくない」という想いをもっています(2017年、株式会社鎌倉新書「自身の終活に関する意識調査」より)。Aさんが上手く進められなかった理由は、親側にある「迷惑かけたくない」という想いが原因と考えられます。
Aさんから声をかけられた父親も、終活をしなければと思いながらもなかなか準備が進められなかったのかもしれません。ただ、子どもに手助けしてもらうのは、それこそ「迷惑をかけてしまう」と思い、「ちゃんと考えているから心配するな」と言ってしまったのでしょう。
●まずAさんが終活をしてみる
Aさんのように上手くいかないときは、まずはAさん自ら終活を進めてみてください。エンディングノートを書くだけでも構いません。インターネットで検索すると法務省が出しているものであったり、書きやすそうなものをAmazonなどで探しても良いかもしれません。「まだエンディングノートは早い…」と感じるかもしれませんが、それは両親も同じです。その感覚を知ることが重要で、書けるところから書き進めてみてください。
先述の法務省のものでは、P8の「デジタルデータ」はこの機会にまとめておくと便利です。P12の「自分のエピソードや懐かしい思い出、忘れられない記憶など、心に残っていることを書いてみましょう」は、私は恥ずかしながら涙ながらに書きました。P3の「家系図」は、両親と一緒に書くとことで話を展開しやすくなるかもしれません。P10の「介護や延命治療のこと」はさみしさを感じつつも、何とも言えない安心感が得られました。こういった率直な感想を語り合うことで、両親の生き方に迫る深い話につながるでしょう。
●終活を通して“その人らしい生き方”を考える機会に
両親が終活を進めないことが、意思表示だと考えることも大切です。まだそのタイミングではないかもしれませんし、タイミングを逸したままに最期を迎えてしまうかもしれません。
それでも、終活から得られる価値観を体現することで「元気なうちに終活できないのも親らしい生き方だ」「親の生き様から何を受け取れるだろうか」という発想になれるのではないでしょうか。この発想が持てると、親の代わりに介護や延命の意思決定、お金の管理をするときにも「本人が準備してなかったから、できる範囲で仕方ないか」と、少し気軽に介護と向き合えるかもしれません。