2024.08.14

誰でも簡単に出来る介護の事前準備とは

2024.08.14

誰でも簡単に出来る介護の事前準備とは

 親が元気なうちは「介護の事前準備をしておこう」と考え実行する方はほとんどいらっしゃらないでしょう。今回は、急な介護でもパニックにならない「誰でも出来る簡単な介護の事前準備」について事例をもとにお伝えします。

●父親が脳梗塞で倒れ緊急入院
 Aさんの70代半ばの両親は、故郷で元気に暮らしていました。ある日、父親がトイレに行く途中に倒れ、母親が駆け寄った時には体は震えて意識は朦朧としていて、ろれつが回らないようでした。父親は救急搬送され、脳梗塞の緊急手術で一命を取り止めました。
母親は急な出来事に動揺して、深夜でしたがAさんに電話をかけました。母親は落ち着きのある穏やかな人柄でしたが、突然身に降りかかった出来事にパニックを起こしているようでした。Aさんも急な出来事に動揺して、両親を呼び寄せて一緒に暮らそうかとも考えました。
一方で夫婦共働きの上、小学生の子供もいます。きょうだいもそれぞれの暮らしがあり、誰か1人が介護を担うのは現実的には厳しいのではないかと、この先の生活のことを考えると不安でいっぱいになりました。

●ひとり暮らしの母親が深夜に交番に保護された
 Bさんの1人暮らしをしている80代の母親が、ある日の深夜、実家から3キロ離れた場所で警察に保護されました。母親は住所を言うことが出来ず、警察が持ち物からBさんの連絡先を見つけて、深夜でしたが電話をかけてきたのです。Bさんは遠方で暮らしているため、警察に母親を自宅まで送り届けてもらうようにお願いしました。
Bさんが翌朝実家へ行くと、母親は警察に保護されたことを覚えていません。Bさんは、きょうだいでなんとか協力して夜だけでも誰かしら側にいるようにしようと考えました。

●いざという時にパニックにならない方法とは
Aさんのケースでは、母親のパニックに引きずられないことが大切です。母親がパニックを起こすのは当然なので、自分は冷静でいるように努めましょう。その上で、父親は自宅での生活が可能なのかを冷静に見極め、自宅介護を選択する場合には、必ず介護環境を整えてから家に戻るようにしましょう。
Bさんのケースでは、心配ゆえに、誰かが常に側にいなければと考えてしまいますが、認知症の方のケアには専門的な知識や対応が必要です。トレーニングを受けていない家族が行動を制限したり、上手な声がけが出来なかったりすると、症状が悪化する原因になりかねません。その上、深夜の見守りは肉体的な負担も大きく、共倒れになってしまう可能性があります。
親の急な異変に誰もが戸惑ってしまいますが、家族だけで乗り切ろうとはせず、必ず病院のソーシャルワーカーや地域包括支援センターへ相談しましょう。現状を伝えて、誰かに話すだけでも冷静さを取り戻すことができます。

●誰でも簡単にできる事前準備と皆さんへのお願い
 私がお伝えしたい事前準備は2つだけです。
1つ目は、親が住む地域の「地域包括支援センター」を調べておくこと。携帯電話やパソコンから、簡単にネット検索ができます。「地域包括支援センター」がどこにあるのかを知っておきましょう。
2つ目は、親が元気なうちに「地域包括支援センターへ電話をかける」こと。自分の親の現状を伝え、介護が必要になったらどんなサポートを受けられるのか、一通り説明を受けておくことです。一度でも電話で話しておけば、いざという時の相談のハードルが下がります。現時点で心配なことがあれば、最初の電話の際に相談をしておくことも大切です。
ただ、介護に直面していない方や、介護というものに興味や意識が向かない方にはなかなかこの情報は届きません。そこで、このコラムを読んだ方々が身近な人へ「たった2つだけの簡単な事前準備がある」と口コミをしていただけると有難いです。コラムのURLを転送するだけでも構いませんので、ご協力いただけたら大変嬉しく思います。