2024.07.03

育児と介護のダブルケアと仕事は両立できるのか?

2024.07.03

育児と介護のダブルケアと仕事は両立できるのか?

 女性の晩婚化により出産年齢が上がったことや核家族化が進む家族構成の変化により、育児と親の介護が同時に重なる「ダブルケア」は年々増加傾向にあります。内閣府の就業構造基本調査によると約25万人が「ダブルケア」当事者であり、その内の9割が仕事をもつ働く世代となっています。平均年齢は40歳前後で、育児・介護ともに中心になって担っている割合は女性が半数以上、男性が3割となっています。今回は「ダブルケア」の実例と、仕事との両立についてお伝えしていきます。

●膨大なタスクで思考停止に追い込まれる
 「ダブルケア」とは、子育てと介護を同時進行して行う状態を表していますが、それに加えて仕事もしなければならないとなれば、その大変さは想像を絶するものでしょう。育児と介護、どちらも予定調和に進むものではありません。目の前に起きていることに必死で対応していくことに精いっぱいで、先のことを考える余裕もなくなります。

 子どもの保育園への送迎、日々の食事の仕度、デイサービスの準備、食事の介助、大切な会議への準備と出席など、マルチタスクを一人で回し続けることは非常に困難で考える余裕すら失う思考停止状態に追い込まれることもあります。

 企業の介護相談でも、精神的・肉体的時に追い込まれてギリギリの状態であることに気づかず、自身の大変さにフタをして耐えている状況の方がよくいらっしゃいます。こういった状況に陥りやすい人は、真面目で責任感が強く、頑張ることにやりがいを感じていて、その大変さを漏らすことができない傾向があります。周囲に気づかれないままに、時に突然倒れてしまうのです。支える側が倒れてしまったら、突然にその全てを誰かに頼らなければならなくなり、多大な影響を及ぼすことになってしまいます。

●育児と介護における役割の違い
子育てと親の介護が同時に発生すれば、子どもが泣いているのに、親の世話で手が離せないという「どちらを優先したらいいのか」と板挟みになる場面も少なくありません。どちらも大切で同じように力を注ぎたいと考えるかもしれませんが、介護は適切な距離を取って親が弱っていくプロセスを、余裕を持って見守ることが重要です。
 直接関わるほど親から頼られてしまい、まだ自身でできることをやらなくなってしまったり、「家族がやってくれるから」と外部サービスを拒否することにも繋がります。つまり、親の介護はやればやるほどタスクが増えしまいます。また、今までほど良い距離感でいい親子関係を築けていたのに、介護により距離を縮めたことで、互いの関係が上手く行かなくなってしまうケースも少なくありません。
逆に、育児は直接の関わりにより、子どもの安心感や自己肯定感を育んでいくものです。子どもとの直接の関わりから、信頼関係が作られていくプロセスこそ、お父さんやお母さんにしかできない大切な役割と言えるでしょう(それでも適切な距離感は必要不可欠)。ダブルケアには、この役割の違いを冷静に見極められる気持ちの余裕が必要です。

●我が子が「ヤングケアラー」となるリスクを知る
 親の介護は、いつどのタイミングで始まるのかは誰にも予想はできません。里帰り出産で久しぶりに帰省した実家で両親の現状を知り、そのまま介護を手伝うことになるというケースもあります。
 なし崩し的に家族の介護を担うことになった場合、無意識のうちに我が子を「ヤングケアラー」にしてしまう要因にもなりかねません。
育児や介護、仕事も含め突発的なアクシデントは誰にでも起り得ます。そういったことが起きても対応できるような、普段の運用に余裕を担保しておくことが重要です。
 「子育てばかりを優先して、親を放っておいていいのか」と罪悪感を持たれる方もいらっしゃいますが、互いの関係を良好に維持し長生きが喜べるためにも、適切な距離を取ることが重要です。まずは、地域包括支援センターに相談をしてプロに任せる体制作りをし、子育てを優先できるようにしましょう。

【参考資料】100%の善意が「ダブルケア」を呼び込むやりきれなさ(日経ビジネス電子版)