2024.06.19

仕事と介護の両立のために絶対にやってはいけない介護とは【後編】

2024.06.19

仕事と介護の両立のために絶対にやってはいけない介護とは【後編】

 【前編】では、5つのうち3つを紹介しましたが、【後編】では2つの失敗事例と“絶対にやってはいけない介護”をお伝えします。

●その4:育児同様に介護休暇・休業を利用して介護する
 「育児・介護休業法」という一つの法律で規定されているため、育児と介護の休暇・休業が同様に運用されているケースが多々あります。ただ、介護はいつまで続くかわからないため、厚生労働省も介護休暇・休業は、介護体制作りのために使うものと発信しています。

育児には社会保険上の手続きがありますが、家族の介護は発生した時点で会社に伝える義務はありません。そのため、会社に伝えるのは家族の介護で休暇・休業を使わなければならなくなった時となりがちです。この状況に追い込まれてから「直接の介護ではなく体制作りに使うべき」と、制度の趣旨説明を受けも遅いのです。

「妹が子どもの授業参観で外出している間に見守りが必要」「父を介護していた母が入院したから、きょうだいで交代で面倒見なければならない」となってから会社に初めての相談するのではなく、「妹や母が抱え込んでいる介護の方針転換をはかるためケアマネジャーと打ち合わせをする」といった早い段階が、介護休暇・休業の適切な取得方法です。

●その5:きょうだいで分担しての介護費用負担
 家族介護でお金の不安を強く感じる方は少なくありません。介護にかかるお金の平均は、月8.3万円×5年1か月=506.3万円となっています(2021年度生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」)。

介護費用をきょうだいで平等に分担しよう、また介護できない分お金を出そう、とすると後のトラブルにつながる可能性があります。介護にかかる金額は、支える家族の不安の度合いによって左右されていることが多く「介護保険で使えるサービスでは足りないから、自費のサービスが必要」と過度な見守りサービスを付加すると、月額費用は青天井になってしまいます。しかも、過度なサービスは要介護状態を促進してしまい、当初予定していた以上の金額がかかる状況に追い込まれていきます。

介護の平均期間は5年1か月となっていますが、5年で終わる保証はありません。例えば10年続いた時、支える側のライフステージも変化します。子どもが私立大学の大学院に進学したり、病気で働けない時期が出てくるかもしれません。「兄さんは大学まで出してもらったんだからもっと負担するべきだ」「近くに住んでいるお前が、休業して介護した方が親も喜ぶのでは?」といった、介護の擦り付け合いのような言い合いから、弁護士を通しての協議に発展することもあります。重要なことは、介護のお金は親の財産や収入で済ませるよう設計することです。親がどれだけ長生きしても、純粋に喜べる状況を作ることが、よりよい介護の最低条件です。

介護に多額の費用をかけても、良い介護体制になるとは限りません。24時間365日の見守りヘルパーを付けて月100万円かけても、何でも頼って生活意欲を奪ってしまえば、生活の質が下がることになります。入居金5,000万円の高級老人ホームに無理に入居させても「早くここから出してくれ!」と家族に1日30回以上電話をするため、電話を取り上げられてしまうのは、やはり良い介護とは言えません。支える側の不安を解消するために金銭負担をすることを避け、親の状況を地域の支援者である地域包括支援センターに伝えることに徹することが重要です。程よい距離感で見守ることが、過度な金銭負担を避けることともに、介護を受ける本人の意思を尊重した介護体制につながります。