2024.05.15
介護の人手不足に働く世代ができる工夫とは?
2024.05.15
メディアなどで「介護業界の人手不足が加速している」と目にすると、「家族や自身に介護が必要になった時に適切なサービスを受けられないのでは?」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。すでに人手不足を実感している方もいらっしゃるかもしれません。今回は、介護業界の人手不足の現状と、それを食い止めるために働く世代ができる工夫とは何かをお伝えしていきます。
●介護業界の現状
少子高齢化に伴う人口減少の影響により、あらゆる業界で人手不足が懸念されています。介護業界も危機的状況にあると言っても過言ではありません。
2023年に厚生労働省が算出した介護職員の必要数からすると、2025年には32万人、2040年には69万人も不足すると予測されています。介護制度があったとしても、人手が足りずにサービスが受けられない、そのようなことが起きてしまうかもしれません。
さらに、介護職員による虐待事件などを耳にすると「介護職」そのものに対していいイメージを持つことが難しく、介護職を希望する人の減少にもつながってしまいます。
●早期相談による支援者の負担軽減
働く世代が介護業界の人手不足に対してできることのひとつは、「早期の介護相談」です。これは支援者の負担を大きく軽減することになります。
家族だけで介護を頑張って続けた結果、「もう限界だから」と余裕のない状況から支援者を頼ると、サービス利用者は強い混乱に陥ります。いきなり知らない人が立ち入ることになり、不安からくる強い拒否反応から、暴言や暴力に発展していくこもと少なくありません。そうなると支援者側も信頼関係を築けないまま肉体的にも精神的にも傷つき、介護職の離職に繋がることもあります。また、業務外の残業が発生し、それが大きな負担となってしまいます。
早くから相談を受けていた場合は、余裕を持った対応ができるので、お互いに無理をすることなく、「どんな声掛けをすることでサービス利用につながるか」を話し合える時間を得ることができます。
私が認知症専門のデイサービスで働いていたとき、庭先でキャッチボールをしたり、蘭の育て方の質問をしたりしながら信頼関係づくりができたのは、互いに余裕があったからです。「早期の介護相談」は、縁があって介護職を選んでくれた大切な人材を守ることにも繋がっていくのです。
●介護職という仕事だから得られるやりがい
個別相談に来られた方が、父親が亡くなった時に入所した施設の職員たちから感謝の言葉をかけられて驚いたそうです。私自身も介護の現場で「お世話させていただいてありがとうございました」と、ご家族へ感謝の気持ちを伝えたことがあります。自分が何かを提供しているというより「与えてもらった、貴重な経験をさせてもらった」と感じたからです。
例えば、戦争から生きて帰ろうとした理由や、子どもに愛情を伝えるタイミングなど、数えればきりがありません。それは、利用者さんやご家族と人としての関わりや、その人となりを知ることで生まれるものでした。
介護職員も人間ですし感情があります。一度でも「与えてもらった」と感じるような経験が出来たなら、簡単に介護の仕事を離れることはできません。モチベーション高く、介護という仕事を続けてもらうためには、「仕事なのだからやってもらって当然」と接するのではなく、ご家族も介護職員との関わり方のちょっとした工夫が必要だと考えます。
●働く世代が協力できるちょっとした工夫
働く人たちを大事にして、良い環境が整い、魅力が高まるといい循環が生まれていきます。介護業界の人手不足をご心配いただけるのなら、親世代、自分自身が安心して歳を重ねていくためにも、介護職員と余裕を持った関わりができる環境づくりにご協力いただけないでしょうか。そのための工夫は「早期の介護相談」であることを覚えておいてください。