2023.06.07

テレワークで懸命に介護した結果、悲しい結末に…

2023.06.07

テレワークで懸命に介護した結果、悲しい結末に…

 コロナ禍ではテレワークが推進されましたが、それにより仕事と介護の両立が困難になったという相談があとを絶ちません。

●1日20回以上のトイレ介助をさせられるAさん
 Aさんの母親は身体の動きづらさが進行していくパーキンソン病で、トイレに行くときに転倒することがありました。テレワークをしながら母親のトイレ介助しようと、Aさんは実家に転居し、テレワークをすることになりました。母親のパーキンソン病が進行すると、母親の不安が強くなり、トイレでなくてもAさんを呼ぶことが増えていきました。Aさんは「仕事中だから、何度も呼ばないでくれ!」と、語気が強くなってしまいます。息子から怒鳴られた母親は、より不安が強くなり昼夜構わずAさんを呼ぶようになりました。その結果、ケンカが絶えなくなり、Aさんの仕事は滞るようになりました。

●部屋に張り紙をしてもウェブ会議に乱入される
 Bさんは、電話の会話から父親の認知症を疑うようになりました。そこで、自宅に呼び寄せてテレワークで見守ることを決断しました。ある日、会議を終えると、リビングのソファーに父親の姿がありません。一人で出掛けてしまったようです。Bさんが2時間ほど探し回ったところで、携帯電話が鳴り「〇〇交番ですが、お父様と思われる方を保護しています」と連絡がありました。Bさんは、玄関にセンサーを設置し、リビングに「一人ででかけないで」という張り紙もしました。ところがテレワーク中もBさんの部屋のドアを開けて、「なんで出かけてはいけないんだ」と怒鳴ります。ウェブ会議中も話しかけられるので、ドアに「会議中のため話しかけないで!」という張り紙をしましたが効果はありません。日中だけ施設に通うデイサービスの利用を勧めても、「俺を年寄り扱いするな!」と拒否します。Bさんは、父親と険悪な仲雰囲気の中でテレワークをすることになりました。

●リビングで両親を見守りながらテレワーク
 Cさんは、高齢の両親と三人暮らし。80歳を超えた両親はともに介護認定を受けて、福祉用具のレンタルやデイサービス、ホームヘルパーなどの介護サービスを利用していました。コロナ禍になりに、両親の感染を恐れたCさんは介護サービスをすべて断り、テレワークで見守ることにしました。Cさんは、両親の介護で日中は集中して仕事ができないため、両親の就寝後に仕事をするようになり、睡眠時間は3時間ほどになりました。努力家のCさんは、何とかこの生活を2か月ほど続けましたが、パソコンを開くと吐き気を催すようになり、医師からうつ病の診断を受けることになってしまいました。

 どのケースも「テレワークなら何とか両立できるだろう」と頑張り続けた結果、仕事も介護も継続が困難となってしまいました。テレワークを選択しなければ、仕事も介護も両立できた可能性が高かったのです。私が知る限りで、介護でテレワークが有効なのは、期限が決められた看取りの場面のみ。いつまで続くか変わらない分からない介護で状態的にテレワークを活用すれば、この3つのケースのようになってしまうでしょう。