2022.02.03

久しぶりに帰省した実家の片付けは“要注意”!

2022.02.03

久しぶりに帰省した実家の片付けは“要注意”!

 帰省時に、親の住む家の片付けをされた方もいるかもしれません。ただ、その片付けが様々なトラブルを生んでしまう可能性があるので、注意が必要です。

●片付けが親子ケンカに発展する
 親の住む家が片付けられておらず、「片付けてあげるのが親孝行」や「片付けないとダメじゃないか」と、片づけに取り組んだとします。それなのに、「それは捨てないで!」「自分でやるから!」と、親から強い口調で言われると険悪なムードとなり、せっかくの帰省が台無しになってしまいます。

●娘に片付けられて不便な生活に
 私が介護の仕事をしていた時に、夫を亡くし、一人暮らしの女性を担当しました。片付けができない様子でしたが、慣れ親しんだ家で穏やかに生活していました。「今年も宜しくお願いします」と年始の挨拶をすると「入れ歯の洗浄剤がない」と言います。事情を伺うと、帰省した娘さんが、片付けをしたそうです。あちこち探したところ、洗面所の収納から入れ歯の洗浄剤が見つかりました。この方は、腰痛がひどく洗面所に立つのは辛いため、テーブルに洗面器を置いて洗浄されていましたが、それを片付けられてしまい、朝から大騒ぎをしたのです。

●老いた親の生活を受け入れるのは難しい
 テーブルの上にある洗面器や入れ歯洗浄剤を見て、強い違和感を覚えるかもしれません。自分の母親がそんな生活をしている、またそれが、自分が食卓を囲んだ想い出のテーブルだと、つい感情のスイッチが入り、片付けずにはいられません。一方で、それは母親が試行錯誤の末に得た、生活がしやすい工夫なのです。それを受け入れられず片づけた結果、親に不便を強いてしまったのです。

●戦略的に「見ない」「触らない」「立ち入らない」
 慣れているはずの介護職でも「良くないとわかっていても、片付けちゃうんだよね」という声をよく聞きます。たくさんの工夫と出会い「素晴らしい生活の知恵ですね」と仕事では言えるのに、自分の親となると許せないのです。そこで、あえて戦略的に「見ない」「触らない」「立ち入らない」ことをお勧めしています。こちらの感情のスイッチが入らないよう、冷静でいられる距離を保つのです。

●片付いていない家の方が的確な支援につながる
 訪問介護サービスを依頼するとき、「こんな汚いところに来てもらうのは申し訳ない」と考えるご家族が少なくありません。しかし、支援する側としては、片付いていない状況から支援のヒントを得ることが多々あります。
先ほどのテーブルに洗面器と入れ歯洗浄剤があるケースであれば、身体が動かしづらいのだろうか、原因は膝関節症、リュウマチ、などと想像して「整形外科や内科などに通院されていますか」といった声掛けができます。いきなり「何か困っていることありますか」と聞いても、プライドの高い高齢者は「私は大丈夫」とシャッターを下ろしてしまいます。日常生活の支援のきっかけ作りのためにも、ありのままの生活を見せていただくのが重要です。

 片付いていない実家を目の当たりにしても、不安を家族の中で抱え込むのではなく、うまく外部サポートにつなげることで、安心して任せられる支援体制を作ることができるのです。