2020.12.16
強く拒否される方を、笑顔でデイサービス利用につなげた方法とは?
2020.12.16
今回は私が認知症の方向けデイサービスで働いていたときのお話です。
●昭和の民家をつかった認知症の方向けデイサービス
介護サービスを日帰りで受け、よりきめ細やかな認知症ケアを行うために手厚く人員が配置され、スタッフが認知症ケアの研修を受けているのが「認知症の方向けデイサービス」。私が勤務していたのは、アットホームな空間とするため、庭と縁側がある昭和の民家を活用し「デイサービス」の看板も出さずに運営していました。そのためか、自身が認知症だという認識がない方や、物忘れがある自身の状況を受け入れきれずにいる方がほとんどでした。
●利用拒否には、チームで考える
日々のケアで印象的だったのは、利用を嫌がる親を玄関先で説得するご家族が数多くいたこと。そんなときは、ご家族、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどと作戦会議を行います。私は「絶対に行かない!」という方にこそ「いかにして、笑顔で楽しくお越しいただくか?」と、日々闘志を燃やしていました。
●一人ひとりの想いに、楽しく寄り添う
私が実践した「誘い出し作戦」の一部を紹介します。
・大学野球が大好きな男性に、庭先でキャッチボールをしながら、その方の出身校の校歌を唄って信頼関係を作り、「キレイに富士山が見えるところを見つけました」と、ドライブに誘う形でデイサービスへ
・元編み物教室の先生だった女性に「編み物を教えてください」と頼み、「道具が揃っているところへ、一緒に行きませんか?」とお願いしたところ、「私でお役に立てるなら」と笑顔でデイサービスへ
共通していたのは「介護」の「か」の字も出さず、その方が人生の中で大切にしてきたことを一緒に楽しむこと。その結果、私は母校以外の大学の校歌を歌えるようになったり、編み物ができるようになったり。人生の先輩と一人の人間としてじっくり向き合う貴重な体験でした。
●拒否があるからこそ、高いモチベーションで関わるのがプロの仕事
このような事例に対して、「それは、川内さんだけでしょ?」というコメントをいただきます。一方で多くの介護職が、最初は利用拒否があっても「楽しく利用してもらえるためには?」と、試行錯誤を重ねています。最初からスムーズにご利用されるケースはむしろ稀なので、「どうせ、うちの親には無理」と諦めないでください。上手くいかないからこそ、高いモチベーションで関わろうとするのが、介護のプロ。ぜひ、頼っていただけたらと思っています。